バスが遅れる理由 - 渋滞だけではない遅延の仕組み
バスが遅れるのは、道路を走る乗り物の宿命
「時刻表では 5 分おきのはずなのに、なかなか来ない」。 バスを待っていて、そんな経験をした方は多いはずです。結論から言えば、バスが遅れるのは運転士の腕や気のゆるみのせいではなく、一般の道路を、ほかの車や歩行者と共有しながら走るという、バスという乗り物の構造そのものに理由があります。
専用の線路を走る鉄道は、他の交通に行く手を阻まれることがほとんどありません。一方バスの走る道路には、乗用車もトラックも自転車もいて、信号があり、横断歩道があり、路上駐車があります。時刻表は、こうした条件が平均的だった場合を想定して組まれた「見込みの時刻」です。条件が平均から外れれば、その分だけ到着は前後します。この記事では、バスを遅らせる代表的な要因を 1 つずつ見たうえで、小さな遅れが雪だるま式にふくらんでいく仕組みまでを解説します。理由がわかると、バスとの付き合い方も変わってきます。
理由 1 - 道路渋滞: いちばん大きく、いちばん読めない
バスの遅れの筆頭は、やはり道路渋滞です。朝夕の通勤時間帯の交通集中、雨の日に増える自動車利用、交差点の先の詰まり、工事による車線減少、事故による通行止め。どれもバス自身にはどうにもできない外部の事情です。
渋滞の厄介なところは、日によって場所も程度も違うことです。同じ路線・同じ時刻の便でも、すいすい走れる日もあれば、ひとつの交差点を抜けるのに何度も信号を待つ日もあります。特に雨や雪の日は、車が増えるうえに流れも遅くなり、乗り降りにも時間がかかるため、遅れが出やすい条件がそろいます。天候の悪い日は「いつもより遅れやすい日」と心づもりをしておくと、いらいらせずにすみます。
理由 2 - 乗り降りにかかる時間は、バス停ごとに毎回違う
意外に大きいのが、バス停での乗降時間のばらつきです。鉄道と違って、バスの乗り降りは 1 か所の扉に人が並んで順番に進みます。乗る人が多ければその分だけ停車時間は延びますし、運賃の支払いに手間取る人がいれば、その後ろの人はみんな待つことになります。
たとえば、こんな場面はどれも停車時間を延ばします。
- 大きな荷物やベビーカーと一緒に乗り降りする方がいるとき
- 車いすの方が乗車し、乗務員がスロープを設置するとき
- 現金払いで小銭を探す方や、両替が必要な方が続くとき
- 降りる人と乗る人が多い駅前のバス停で、入れ替わりに時間がかかるとき
ひとつひとつは数十秒の出来事ですが、バス停は路線に数十か所あります。各バス停で少しずつ時間が延びれば、終点に着くころには数分の差になります。逆に言えば、乗る前に IC カードや小銭を手元に用意しておくことは、自分の乗車をスムーズにするだけでなく、そのバスの定時運行に貢献するささやかな協力でもあるのです。
理由 3 - 信号のめぐり合わせと、道路のつくり
信号も、積み重なると無視できない要因です。バスはバス停に停まるたびに車の流れからいったん離れ、発車時にまた合流します。このとき青信号のめぐり合わせから外れると、次の交差点で赤信号に捕まりやすくなります。信号 1 回の待ちは 1〜2 分程度でも、交差点の多い都心の路線では回数が積み重なります。
道路のつくりも影響します。右折車の後ろで動けなくなる交差点、路上駐車をよけるためにふくらむ狭い道、合流に時間のかかる幹線道路への進入。どれも時刻表の上では見えませんが、運行のたびに数十秒単位の揺らぎを生みます。さらに、バス停自体が混み合うこともあります。同じバス停に複数の系統が発着する場所では、先に停まっているバスの発車を待ってからでないと、後ろのバスはのりばに着けられません。
遅れが遅れを呼ぶ - 団子運転が生まれる仕組み
ここまでの要因は、それぞれは小さな揺らぎです。しかしバスには、小さな遅れがひとりでに大きくなるという増幅の仕組みがあります。
ある便が少し遅れると、その便が各バス停に着くまでの待ち時間が延びるため、バス停には通常より多くの乗客がたまります。乗る人が多いほど乗降時間は延び、遅れはさらに広がります。一方、そのすぐ後ろを走る便は逆のことが起こります。前の便が乗客を「先に拾ってくれている」ため、待っている人が少なく、停車時間が短くなり、どんどん先行の便に追いついていきます。こうして、遅れた便と早めの便が連結列車のように連なって走る状態が生まれます。これが俗に言う団子運転です。
団子運転になると、「2 台続けて来たのに、その前は 15 分も来なかった」という、待つ側にとっていちばん不可解な状況が起こります。時刻表上の運行間隔は均等でも、道路の上ではこの増幅の力学が常に働いているのです。運行本数の多い路線ほど、この現象は起こりやすくなります。
バス事業者の側も、ただ手をこまねいているわけではありません。途中のバス停で発車時刻を調整して間隔を整えたり、ダイヤを組む段階で混みやすい時間帯の所要時間を長めに見積もったりと、揺らぎを織り込む工夫が重ねられています。それでも道路の条件は日々変わるため、遅れをゼロにすることはできない、というのが実情です。
遅れとうまく付き合うには - 仕組みを知って備える
ここまで見てきたとおり、バスの遅れは渋滞・乗降時間・信号という構造的な要因の重なりで生まれ、団子運転の仕組みで増幅されます。つまり、バスの遅れは「たまたまの不運」ではなく「起こるべくして起こる揺らぎ」です。そう理解すると、取れる対策も見えてきます。
- 時間の約束がある日は、時刻表の 1 本前の便を目安にする
- 雨や雪の日、朝夕の混雑時間帯は、遅れやすい前提で予定を組む
- バスがいまどこを走っているかを知らせる接近情報を、バス停へ向かう前に確かめる
特に 3 つ目の接近情報は、「あと何分待てばよいか」がわかるだけで待ち時間の体感を大きく変えてくれます。バスの位置がどのような仕組みで把握され、案内されているのかに興味のある方は、バスロケーションシステムの仕組みもあわせてお読みください。また、そもそもの発車時刻の調べ方はバスの時刻表の見方で解説しています。仕組みを知って、賢くバスを待ちましょう。